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インクルーシブデザイン事例|片手でも自然に使える——Jing Yi「Brisky Chopsticks」

  • Design English Guide
  • Sep 21
  • 3 min read
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参考画像:Brisky Chopsticksのスクリーンショット


📘 Daily Design Word|Inclusive Design(インクルーシブデザイン/包摂的デザイン)


英文释义: A design approach that ensures products and services are accessible and usable by as many people as possible, regardless of ability, age, or background.


日语释义: 能力や年齢、背景に関わらず、できるだけ多くの人が利用できるように配慮する設計思想。障害や制約を持つ人も排除せず、共に生活できる環境を目指す。

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🌫 プロダクト事例|中国・Jing Yi「Brisky Chopsticks」


概要


中国のデザイナー Jing Yi が手がけた 「Brisky Chopsticks」 は、脳卒中などで片手に麻痺が残る人のために設計された補助用箸です。2025年に Red Dot Product Design Award を受賞しました。


従来の箸は繊細な指先の動きを必要とし、麻痺のある人にとっては操作が難しい道具でした。Brisky Chopsticks は、親指の付け根など比較的制御しやすい筋肉 を使って操作できる形状を採用。見た目は通常の箸に近く、「補助具を使っている」という違和感を最小化 しています。


この設計により、ユーザーは自分で食事をとるという 自立性と尊厳 を取り戻し、食事の時間がリハビリにもつながる新しい体験が生まれています。


Inclusive Designの応用ポイント

  • 使い手の制約に寄り添う 指先の微細運動が難しい人にとって使いやすい筋肉を活かす設計。

  • 通常の道具との違和感を減らす 補助具らしさを抑え、日常的に使っても自然に見えるデザイン。

  • 心理的なハードルを下げる 「自分も普通に箸が使える」という感覚が、自尊心を高める。

  • リハビリを日常に組み込む 食事の動作そのものが、自然なリハビリ運動になる。


💡 デザイナーへの示唆


Brisky Chopsticks は、単に「弱者を助ける道具」ではなく、日常の行為そのものを再設計する 試みです。ここから得られる示唆は以下の点にあります:


  • 行為を観察する力 従来のプロダクトを「誰が、どの筋肉や動作で使っているか」という身体的ディテールに分解し、使えない要素を抽出すること。その再構成がインクルーシブデザインの出発点になる。

  • “補助具らしさ”の排除 デザインが「特別な道具」に見えると、ユーザー自身が社会から隔離された存在と感じてしまう。Brisky のように日常の器物に近づけることで、社会参加の感覚を回復させることができる。

  • 生活リズムへの統合 食事は毎日の習慣である。そこにリハビリを組み込むことで、“特別な訓練時間”を設定せずとも自然に身体機能が回復する。この「習慣との統合」こそ持続可能な支援デザインの核となる。


つまり、Inclusive Design は「すべての人が使えるように広げる」だけでなく、行為・習慣・社会参加をどう再構成するか という設計の問いをデザイナーに投げかけています。そして、その実践の核心にあるのは――大多数の人が気づかない細かな不便を丁寧に観察し、それを新しい体験価値へと転換する姿勢です。この視点こそ、プロダクトデザインをより普遍的で力強いものにする鍵となります。

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